時間をかけて育てる喜び
たとえば北欧のヴィンテージ家具や昭和・大正時代の中古家具が注目され始めたのは、いつのころからだっただろうか。使い込まれたモノだけが持つ深みある色。初めて触れた人にも懐かしさを感じさせる優しい佇まい。傷やほころびさえも味わいに変えてしまう古い家具の魅力は、若い世代を中心にじわじわと浸透し、今やそれを暮らしに取り入れることはインテリア好きの定番にもなっている。
ヴィンテージ家具人気がもたらしたいちばんの功績は、私たちに、使い込まれたものの魅力、新品とは違うかけがえのない美しさを教えてくれたことだと思う。ピカピカの新しい家具ももちろんきれいだけれど、新しさゆえの美しさはいつまでも続くものじゃない。そのかわり、1年2年10年と大切に使ううちにあらたな輝きが生まれるんだということを、古くなるってことは「くたびれる」のではなく「味わい深くなる」んだっていうことを、教えてくれたのじゃないだろうか。
使い込まれた家具の味わいを知る人が増えた今、もっと大きな喜びがあるとしたらそれは、自分の手で味わいをつくっていくこと。つまり自分の手で家具を育てることだ。古着屋でヴィンテージジーンズを買って楽しむのもいいけれど、新品のジーンズを繰り返し履き続け、自分のカラダや歩きグセにぴったりなじむ、この世にひとつだけのマイヴィンテージジーンズを育てるほうが、履き心地のよさも愛着もはるかに大きいはず。家具だって同じことなのだ。時間も手間もかかるけれど、自分で育てた家具の味わいは、より深く大きいものに違いない。
今回紹介するのは、まさに自分で育てたくなる家具。1920年創業のイタリア家具メーカー、RIVA(リーヴァ)社のテーブルやスツールだ。アルフレックス ジャパンによって日本に初お目見えしたこのメーカーは、人と環境に害のないモノづくり・次世代にも譲り渡していけるモノづくりがモットー。まずすべての家具は計画伐採による天然木からつくられ、限りある資源との共生関係が保たれている。また、創業以来3代にわたり受け継がれているのは、ライフサイクルの長い家具づくりの技術とノウハウ。つまり、時間とともに変化することを考えたうえでの素材使いやデザインがなされているのである。さらに、製品化された後も木が呼吸できるよう、仕上げには100%天然素材のオイルやワックスを使用。すべての過程において、人にも環境にも害を及ぼさないモノづくりが貫かれている。
しかも、レンゾ・ピアノやテリー・デュワンといった世界的な建築家やデザイナーが、リーヴァ社の企業姿勢に共感しデザイン開発に参加。エコロジーに徹したモノづくりでありながら、世界のデザインを牽引するイタリアらしい、きわめてモダンで美しいデザインを実現しているのだ。
さて、そんな話を聞いたあと、東京・恵比寿駅の近くにあるアルフレックス ジャパンのショールーム「アルフレックス ショップ東京」でリーヴァの家具に触れてみて、ワタシはいたく感激した。そうか育てる家具ってこういうことだったのか。ショールームにあるその家具はもちろんまだ育ってはいない。でも、なんていうのだろう、テーブルもスツールも圧倒的な存在感を放っているにもかかわらず、触るととても優しくて、木の息遣いがトクトクと伝わってくる。使い方次第でどんなふうにも育っていくだろうことが、見て触れた瞬間伝わってきて、「この家具には希望がある!」と感じちゃったのだ。
どの製品にもメンテナンスキットが付いてくるという点にも、メーカーの真面目な姿勢が感じられてグッとくる。日々の手入れを通じて家具を育て、さらには次世代へと受け継ぐ希望をも育てるのである。毎日使って慈しんで、キズやシミも付くだろうし色もだんだん変わるだろうけれど、年を重ねるたびに魅力を増し、愛着もいっそう深まっていく。本当に力のある家具って、そういうものなのだ。読売新聞参照
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